NFT

Axie InfinityとScholarship徹底解説

この記事は以下の7点について詳しく書かれたものです。そこそこ長いので読みなおす際には目次から読みたい章へ飛んでください。

Axie Infinityについて

Axie Infinityは世界中で流行しているNFT(Non-Fungible Token)ゲームです。
ポケモンやたまごっちにインスパイアされたゲームであり、Axieというキャラクターを育て、コレクションして、戦わせます。(以下ゲーム名との区別のためにキャラクターのAxieはアクシーと記載)
以下のお饅頭のようなキャラクターがアクシーたちであり、NFT化された資産です。

ゲームはまだβ版ではあるものの完成度は高く、戦略性のあるバトルや心理戦が楽しめます。こういった要素を楽しめる人にオススメできるゲームです。私は割と好きです。

これがアクシーのステータス詳細画面です。
各種パラメータ、ボディパーツ、技構成の情報がメタデータとして記録されています。

アクシーのステータス画面

実際のバトル画面です。
左が自分のチーム、右が敵のチームです。
手札としてアクシーの技がランダムで配られます。

ランダムに配られた技から自分がそのターンに出す技を選んで……

攻撃!
技ごとに攻撃力や効果が異なります。

ターン制バトルで、殴ったり、殴られたりを繰り返しながら勝利を目指します。

そしてゲームに勝利すると報酬としてトークンを獲得できます。

見ての通りゲーム自体はシンプルです。
直感的に迷うことなくプレイできるようになっています。

しかし通常のゲームと異なり、Axie Infinityをプレイするためにはいくつものクリアすべき障壁があります。
手順を簡単に書くとこうなります。

  • まず仮想通貨取引所で口座開設をしてETHを購入し、
  • web walletのMetamaskに購入したETHを送金し、
  • 自分用のRonin walletを作成し、
  • Ronin walletに最低12万円程度のETHをDepositし、
  • Depositした資金を元手に3体のアクシーを購入し、
  • Axie Infinityプレイする

バカですか!

こんなに複雑な手順を踏まなければならないゲームが流行るなんて到底思えません。
手順が複雑なだけでなく、ゲームをプレイするために最低限必要なお金が約12万円です。私見ですが、12万円あれば大体何でもできます。

それなのにAxie Infinityには2021年7月に入ってから急激な盛り上がりを見せ、今では1日に100万人もの人がプレイし、運営会社のSky Mavisは1か月で292億円以上の利益を上げています。
※Axie Infinity Hits 1 Million Daily Active Players, First NFT Project to Hit $1B All-Time Trade Volume

DappRadar
DappRadar
画像

驚異的な収益額です。
8月の収益に至ってはまだ月半ばであるにも関わらず売上が2億ドルを超えてしまいました。

アプリストアでダウンロードボタンを押すだけで遊べるゲームが無数にある中で、なぜこんな面倒くさいゲームが流行り、大きな利益を上げているんでしょうか?

Play-to-Earnの実現

Axie Infinityは今やPlay-to-Earn(遊んで稼ぐ)の代名詞です。
フィリピンやベネズエラなどの一部の国ではAxie Infinityをプレイすることが生活資金を稼ぐことに直結します。ゲームを遊んでコンピューター戦や対人戦で勝つと、プレイヤーはSLP(Smooth Love Portion)と呼ばれるトークンを入手できます。
このトークンはゲーム内で使用することもできますし、市場で売却することもできる資産です。

つまり、ゲーム内の資産をゲーム世界から現実世界へ持ち出すことができます。

下の写真はマグネスTVというペンネームでゲームをプレイする22歳の若者と、彼がAxie Infinityで得たお金で建てた家です。ゲームをして家を建てることが現実世界で可能になっています。

https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=112770584274960&id=100858845466134

ゲーム内の通貨を現実でも売却すること自体は昔からRMT(Real Money Trade)として多く行われてきました。しかしほとんどのゲームは利用規約でRMT行為を禁止しており、見つかり次第アカウントをBANされるのが一般的です。

NFTゲームではブロックチェーンのプロトコルを利用することでゲーム内トークンを正当な手段で換金できるようにし、市場でのユーザトークン売却を含むユーザー間の取引が活発になることがゲーム拡大に繋がるようなデザイン設計を行っています。
これは従来型ゲームとの大きな違いです。

ゲームをプレイすると、1日におおよそ75~100SLP程度を手に入れることができます。パーティが強くプレイが上手ければ150SLP以上も狙えます。
SLPの価格は0.16ドル程度で推移しているので、ゲームをプレイするだけで16~24ドル相当のお金を得られます。
生活するには心もとない金額に思えるでしょうか?

これはaxieinfinity.comへの国別トラフィックです。
1位フィリピン(42.91%)、2位ベネズエラ(5.96%)、3位ブラジル(4.40%)となっています。

Simillarweb


ここでAxie Infinityが最も盛んなフィリピンのデータを見てみましょう。

下図はフィリピンの2020年の世帯所得分布です。
中間所得層は増加傾向にあります。一方で、最も割合が増加しているのは上位の中間所得層であるため、貧富の格差は拡大傾向にあることがわかります。また中間所得層の大部分は都市部に集中しています。
コロナの影響も大きく、失業者に対する国からの支援も十分ではないため、2021年以降は格差はますます拡大するだろうと予測されています。

医療国際展開カントリーレポート 新興国等のヘルスケア市場環境に関する基本情報 フィリピン編(経済産業省)

次にフィリピンの年齢別の人口構成を見てみましょう。
2020年(予測値)は、15歳未満が30.1%、15~64歳が64.4%、65歳以上が5.5%となっています。
ゲームをプレイすることでお金を得るという新しい価値観に対する抵抗は少ないだろうことが伺えます。

医療国際展開カントリーレポート 新興国等のヘルスケア市場環境に関する基本情報 フィリピン編(経済産業省)

なお、ネット上でフィリピンの平均年収などについて調べると国家統計局国際労働機関(ILO)が出している平均48万円というデータが出てきますが、2021年8月現在調べて出てくるのは2011年のデータであるため全くあてになりません。
10年間で経済規模は大きく拡大しています。
そもそも地域間格差が大きい国で平均年収を出すこと自体が乱暴すぎます。

さて、このデータを見てわかるように世帯年収が平均1万ドルあればフィリピンでは年収レンジが上位4割に食い込みます。ちなみにこれは日本だと約560万円に相当します。
※平成29年度の所得金額階級別世帯数の相対度数分布(厚生労働省統計資料)より算出

ゲームを1日にプレイして得られる金額が17,00円~2,700円程度です。もし自分1人だけで毎日プレイすればAxie Infinityという“仕事”の年収は62万円~99万円程度になります。
雑な計算になりますが、わかりやすさを優先してフィリピンにおけるこの年収を日本人の感覚に直すと年収336万円~590万円程度です。

ゲームをプレイするだけで年収590万円!

これが大きなハードルがあるにも関わらずNFTゲームをプレイする人がたくさんいる最大の理由です。
(ノンバンク問題という大きな社会課題を解決する手段にもなっているのですが、これはいずれ別の記事で触れます)

ゲームに費やす必要のある時間はレベルを上げれば1日2時間以内に収められます。副業として余裕で成り立ちます。
1日に2時間ゲームをプレイするだけで年収600万弱を目指せるんです。

どうでしょうか?もしこの状況だったら日本人でも多くの人がAxie Infinityに飛びつくのではないでしょうか。

しかしここでAxie Infinityをプレイするためには3体のアクシーが必須であることが壁として立ちはだかります。日本円にして約12万円の初期投資を行わないとスタート地点に立てません。
フィリピン人の感覚的には約90万円のお金を最初に突っ込まないとゲームをプレイすることができません。

コロナ禍で職を失っている中で大金を出すことなんてできない。
でもAxie Infinityをプレイしたい!

そんな要望に応えるためにScholarship制度が生まれました。

Scholarship制度について

Scholarship制度はAxie Infinityの運営会社ではなく、ゲームのユーザーコミュニティによって生み出された制度です。
Scholarship(奨学金)制度とは、3体のアクシーをManagerからScholarに貸し出してScholarにゲームをプレイしてもらい、Scholarが得た利益の一定割合をManagerが貰う仕組みです。

地主が農地を貸し、そこで得られた収穫物の一定割合を小作料として徴収する小作制度のAxie Infinity版と考えるとわかりやすいかもしれません。
このビジネスモデルの歴史は非常に古く、土地を所有するという考えが発生したときまで遡ると考えられます。平たく言えば農耕の起源と同じだと考えていいでしょう。農耕の起源には諸説ありますが、少なくとも10,000年前には中国長江流域で行われていたことが発掘調査でわかっています。
※Farming Had an Earlier Start, a Study Says / NewYorkTimes

同じことを従来型のゲームでやろうとすると、アカウント(≒資産)の持ち逃げが発生しかねないので実現は困難ですが、ブロックチェーンゲームではManagerはScholarに対してwalletの秘密鍵を渡すことなくゲームアカウントへのログイン権限のみを貸し出すことができます。

Scholarship制度の中で中心に立っているのがYield Guild Games(通称YGG)というブロックチェーンゲームギルドです。彼らはPlay-to-Earnの旗役として多くの人にゲームプレイの機会を提供しています。
YGG公式サイト

ゲーム運営会社のSky Mavisはベトナムのスタートアップ企業であるにも関わらず、ゲームが一番流行っているのはフィリピンです。これはYGGの影響によるものです。
これはYGGが作成したAxie Infinity × Play-to-Earnの紹介動画です。Scholarshipにも触れています。18分と長めの動画ですが、フィリピンの一部コミュニティでこのゲームがどのように受け止められているのかがよくわかるものになっています。
Youtubeの自動字幕機能を使えば誰でも動画の内容は理解できます。

Scholarshipでどれだけ儲かるのか、リアルな数値で皮算用してみましょう。

前提条件として、3体のアクシーを購入するための費用が12万円、1日にScholarが獲得するSLPが100SLP、ManagerとScholarの利益分配は5:5、1SLP=0.16ドル、1ドル=110円であるとします。

100SLPは1,760円なので、1年間で得られるお金は365をかけて64万2,400円です。(両替&出金手数料を考慮しない場合)

利益を5:5で分けるとお互いの取り分は32万1,200円です。
つまりManagerは12万円の初期投資を行うことで年間32万1,200円の売上を創出できます。
年利に換算すると+268%です。

たとえばキリよく32ETHを初期投資として突っ込んだとすると、91人のScholarを雇用でき、1年間の売上は2,936万円になります。

一方でScholarの年収は32万1,200円です。フィリピン人にとってのこの金額を日本人の感覚に直すと、189万円になります。ところでフィリピンは地域による所得格差が非常に大きい国です。Axieが特に流行っている地方では189万円は十分に何人もの人が食べていけるだけのお金です。

もっとも、この金額はAxie Infinityが今のゲームシステムを維持すること、そして何よりもSLPが現在の0.16ドル水準を維持するのであればという仮定のもとに成り立っているので、将来の利益を保証するものではありません。ですが、少なくとも現時点では非常に利益率のよいビジネスであることは明らかです。

そのため今は多くの日本人がScholarshipのManagerをやろうと名乗りを上げています。
しかしここで問題となるのが税務の問題です。
正しく税務処理を行わなかった場合、利益が出るどころか赤字になってしまう可能性があります。

Scholarship制度を活用する上での税務上の注意点

当然ですがScholarshipで得た利益に対しては税金がかかるので納税を行う必要があります。
わかりやすさのために雑所得の最高税率である45%+住民税10%の合計55%の納税を行うことを考えましょう。

ManagerとScholarの分配を5:5にしていた場合、Managerが納税する金額は 0.5×0.55=0.275となり、全体の27.5%です。手元に残るお金は全体の22.5%になります。
(手数料等は考慮せず)

もしここでScholarへ支払いを行っていることを証明できなかったらどうなるでしょうか?
Scholarへの支払い分の5割の分も含めて納税をしなければいけなくなります。
その場合は全体の売上の55%の金額が納税額になるので、0.5-0.55=-0.05となり、手元に残るお金は全体の売上の-5%になります。1円も残らないどころか赤字です。

どうしてこんなことになってしまうんでしょうか。
税務署とダメなManagerとの間で行われるだろう会話を表現してみます。

納税しまーす!金額はこれです!各種書類はこれです!

ん?この「Scholarへの支払い」とは何ですか?

Scholarship制度を活用して雇用しているScholarへの報酬です

業務に必要なものを貸し出し、業務を遂行してもらっています

なるほど。具体的に誰と契約しているのですか?また契約を証明するものはありますか?

??? そういったものは特にないです。でも支払い履歴はありますよ

えーっと、その支払い先があなたのものでないことは証明できますか?

証明?よくわかんないです。
でもほら、ここで送金していることは確認できます

誰と業務委託契約を結んでいるのか、及び誰に対して支払いを行っているのかを証明するための書類は存在しないということですね

証明ができない以上、「Scholarへの報酬」とやらを経費として認めることはできません。

売上金額全額を利益として納税を行ってください。

どっひゃーー!!!

最悪の展開ですね。

ネット上で調べた限りですと、Scholarshipを紹介した記事はあっても、Scholarshipを利用する上での実務を詳しく記載したサイトはほとんど見つかりませんでした。
闇雲に始めてしまい、納税を行うタイミングになって地獄を見る人は今後たくさん出てしまうのではないかと思います。

誰と契約し、誰に対して支払いを行っているのかを証明できない場合は、そのお金は経費として認められません。至極当然のことです。

こういった事態に陥らないためには、各種書類を取り揃えたり、Scholarとの会話のログを記録する必要があります。

以下に最低限用意しなければならない書類や記録をリストしました。

  1. ManagerとScholarとの間で締結された、両者のサインが確認できる業務委託契約書
  2. Scholarの個人情報・写真
  3. Scholarの受領サインを確認できる支払い証明書
  4. 契約時の会話のログ

それぞれの項目について、なぜ必要なのかを簡単に記載します。

①ManagerとScholarとの間で締結された、両者のサインが確認できる業務委託契約書

どのような業務を委託するのかを明記した業務委託契約書がないまま業務委託契約を結んでいることを証明することは困難です。また納税のためのみならず、お互いにトラブルのないやり取りを行うためには業務委託契約書はあってしかるべきです。

②Scholarの個人情報・写真

業務委託契約を結んでいるScholarの個人情報がないと、業務委託契約書があったとしても本当に契約を結んでいるかどうかは判断できません。本人確認のためにはScholarの個人情報(パスポートや運転免許証など)とScholar個人の写真が一緒に写っているものを送ってもらいましょう。

➂Scholarの受領サインを確認できる支払い証明書

いつ、誰から誰へ、いくらの支払いを行ったのか、またそれは受領されたのかどうかを確認するための証明書です。これがないと本当に支払いを行ったのかどうかがわかりません。

④契約時の会話のログ

念のために契約内容を提示し、その内容に同意してもらっているときの会話のログも残しておきましょう。
Scholarとのやり取りの多くは各種SNSのチャット機能を用いて行われると思います。その会話のスクリーンショットを撮って保存しておけば安心です。

Scholarshipのために必要な書類があることはわかった。
でもその書類はどうやって用意すればいいの?

そんな方のために用意したものが、私が弁護士さんに頼んで作成していただいたScholarshipのための業務委託契約書と支払い証明書のひな形です。

また、各種書類の用意とは別に、可能であれば読者の皆さんがお住いの地域の税務署、あるいは税理士さんに相談するようにしてください。
NFTゲームに関するやり取りで得たお金の取り扱いについては法整備がまったく追いついていません。地域の税務署によって見解が異なる可能性があります。

業務委託契約書を交わしていれば業務委託の外注費として認められるのか否か。
ETHで購入するアクシーの購入費用は事業経費として認められるのか否か。
購入したアクシーは減価償却資産の対象になるのか否か。
など、確認しないままに突っ走ってしまうのは危険です。

ここまでさんざん書いておいてから言うのは申し訳ありませんが、この記事の内容だけを鵜呑みにしないようにしてください。

ご自身で弁護士事務所の扉をたたき、Axie InfinityのScholarshipに関する詳細説明を行い、依頼料を支払ってひな形を作成してもらってください。後で後悔しないようにこの手の契約回りはしっかりやりましょう。

ひな形の利用方法・Scholarshipの始め方

業務委託契約書が手元にあっても、普段そういった契約業務に携わっている方でもない限りどういう風に使えばよいのかはよくわからないと思います。
この章では業務委託契約書・支払い証明書の使い方について、Scholarhipを始めるところから解説します。

①Axie Infinityを自分でやってみる

極めて重要なポイントです。まずは何はともあれAxie Infinityを自分でプレイしてみてください。
自分でプレイしてみないとどんなアクシーを用意するべきなのかもわかりませんし、ゲームプレイに関する質問や、MetamaskやRonin walletに関する質問をされても答えられません。

ゲームに関する知識がないと、Scholarship用にアクシーを買ったはいいものの、何が強いのかわからないために弱いアクシーを購入してしまい、Scholarも稼げないし、ひいては自分も稼げないということになりかねません。投資でもそうですが、ゲームのルールを理解することは何よりも重要です。必ずやってください。

ついでに自分でプレイする分には、自分の稼ぎは100%自分のものになるので1人だけなら自分でプレイするほうがたくさんのお金を稼ぐことができます。

②税務署や税理士に相談を行う

Sholarshipを行うにあたり、地域の税務署や税理士さんに相談を行ってください。
必須ではありませんが相談することを強く推奨します。

後々、「これは経費としては認められません」と宣告されてはたまりません。
法整備が整っていないからこそ、自分の身を自分で守るための立ち回りが要求されます。

絶対に聞くべきことは、「Scholarへの支払いは業務委託契約に基づく外注費として認められるか」「アクシー購入費用は事業経費として認められるか」の2点です。

Scholarshipの説明に関しては上に載せたScholarship説明図を見せながら話せば伝わりやすいはずです。ぜひ活用してください。

➂Scholarshipを行うための必要書類やScholar用アクシーを用意する

必要書類やScholar用アクシーを用意しましょう。
ここまで読んでいただいた方ならわかるように、Scholarshipは第三者とのお金のやり取りを行うものであるため結構面倒くさいです。
必要書類を用意するところで挫折してしまうようなら、後々の税務処理は絶対にクリアできません。自分に向いていない場合は素直にやめておきましょう。

Scholar用のアクシーやRonin walletはScholar募集を始めてから用意してもよいですが、募集後の流れをスムーズにするためにも事前に用意しておくことをオススメします。

どんなアクシーを用意すればよいかわからない?
そんな方は①に戻ってやり直しです。まずは自分でプレイし、気になる箇所については攻略情報を調べてください。ゲーム自体を素直に楽しんでみましょう。

④Scholarを募集し、採用する

準備が整ったらScholarを募集します。
Axie Infinity公式DisocordのScholarship部屋に書き込んでいる人に声をかけてもいいですし、Googleフォーム等で募集フォームを作ってDiscordやTwitterで応募を募ってみても構いません。
Sholarになりたいと思っている人は本当にたくさんいるので応募者が見つからないということはありません。

⑤Scholarに契約内容を説明し、同意してもらう

業務委託契約書の出番です。
契約内容を説明し、疑問点がないかしっかりと確認を取ってください。
同意が取れたら契約書にサインをしてもらいます。個人情報も忘れずに提出してもらってください。
また契約に関するやり取りのスクリーンショットも撮って保管しておきましょう。
Scholar単位でフォルダを作って情報を格納しておけばOKです。

Scholar用アカウントの情報を渡せばあとはゲームをプレイしてもらうだけですが、個人的にはScholar用Discordを作成することをオススメしています。
Scholar向けのよくある質問をまとめたり、Managerからのアナウンスを行ったり、Scholar同士で交流を行ってもらう場として活用できます。
日々のノルマを報告するだけのつまらないコミュニティではなく、楽しくゲームをプレイしてもらうためのコミュニティ作成を心がけてください。

⑥Scholarへ支払いを行う

SchlarのRonin walletに支払いを行います。
支払い後に支払い証明書を発行しSchlolarに送付。
入金を確認してもらったら証明書にサインをしてもらってください。

⑦各種税務処理を行う

日々の記録は忘れずに行いましょう。
後でいいやでまとめてやると抜け漏れが発生します。面倒くさがってやらずにいると本当に後悔することになります。マジで。
記録するべきものが発生する度に都度行えば大した作業ではありません。
データのバックアップも忘れずに取っておきましょう。

以上がひな形の利用方法・Scholarshipの始め方です。

Scholarshipのリスク

ここまでAxie InfinityとScholarshipについての紹介、Scholarshipの始め方や注意点について書いてきました。
いいこと尽くしに見えますが当然リスクもあります。

1.Axie Infinityの流行に陰りが見えることによるSLPの暴落

SLPはバトルに勝利することで得られ、アクシー同士を配合するブリーディングによって消費されます。そのためブリーディング需要が大きい=新規参入者が多い状況であれば価格が高止まりしてくれる可能性は高いものの、新規参入者が減少、あるいは横ばいになると下落することが考えられます。

また現在のゲームバランスが維持されたとしても、競合となるNFTゲームが登場し、そちらに人が流れることで新規参入者が減少してしまうこともあり得ます。
アクシーの個体数の増加状況と新規参入者の増加状況を照らし合わせつつ、アクセルを踏み過ぎないようにすることをオススメします。

ちなみに私個人としてはSLPの長期的な値動きに対してポジティブです。
現在のSLPはAxie InfinityのBreeding費用として使われているだけですが、今後はRoninチェーン上で新しく使用可能になる各種ソリューションでも用いられるようにユーティリティが拡大していくと考えているためです。

2.Scholarが複数アカウントを運用することによるアカウントロック

Axie Infinityでは同一人物による複数アカウントの運用を厳しく禁じています。(だからこそのScholarship制度でもあります)
そのため複数アカウントの利用が判明したときにはアカウントがロックされたり、最悪の場合はBANされることになります。
海外の悪質な業者では10年のアカウントロックの宣告を受けたところもあるようです。

アカウントがロックされるとゲームがプレイできずSLPを獲得できないばかりか、アクシーを取り出すこともできなくなるので事実上の資産凍結になってしまいます。
複数アカウントは厳しく禁止する必要があります。

3.ゲームシステムの変更に伴ってSLPが獲得できなくなること

ゲームバランス調整のために運営はSLPやAXSの需要と供給を変化させています。
8月に入ってから行われたアップデートでは、対人戦を重視するスタイルへと仕様が変更され、誰でも1日に150SLP稼げる環境から、弱いパーティだと75SLPが+αしか稼げない環境になりました。

Scholarship制度はAxie Infinityというゲームの上で成り立っている仕組みであることはしっかりと認識してください。

4.不測の事態によるSky Mavisの倒産等のリスク

一般的なスマホゲームではゲームがサービス終了になってしまったら、ゲーム内で持っているキャラクターやアイテムは消滅してしまいます。しかしアクシーはNFTなので、NFT資産は運営が倒産してもなくなることはありません。
しかしアクシーのユーティリティは運営が倒産してしまったらなくなってしまいます。

これはAxie Infinityに限った話ではありませんが、ハッキング・災害・政局不安・世界的なNFTゲームに対する規制など予測不可能な事態が起きたときには状況が大きく変わる可能性があります。

5.税務処理が不十分であるときに生じる納税におけるトラブル

ここまでしつこく書いてきた内容ですが、一応これもリストしておきます。
Scholarshipを行うために必要な各種書類や記録が不十分な場合、Scholarに報酬を支払っていることが証明できず、本来払うべき以上の金額を納めなくてはならない可能性があります。

後で大変な思いをしないためにも、やるべきところはきちっとやっておきましょう。
税務周りでわからないことがあったら、税務署や税理士などの専門家に聞いてください。SNSで声が大きいだけのなんか詳しそうな人の言うことは参考程度に留めてください。彼らの言うことが正しい保証はどこにもありません。(この記事についても同様です)

Manager向けの心構え

ここまで読んでくださった皆さん、お疲れさまでした。
最後に私からManagerの皆さんに向けたメッセージです。

業務委託契約書はManagerとScholarがお互いに気持ちよくゲームをプレイするために締結するものです。Scholarを縛り付けることが目的ではありません。
雇用者と雇用主は業務上の役割が異なるだけです。Scholarは「Boss」あるいは「Sir」と呼んでくれますが、だからといって突然Managerであるあなたが偉くなるわけではありません。

Scholarshipを行っているManagerの中には、毎日義務的に日次の獲得SLPを報告させ、少しでもノルマを下回ったら契約を解除してScholarへの報酬をすべて没収する人もいると聞きます。
日本で働き、普段はブラック企業のことを苦々しく思っているくせに、立場が変わると態度をコロッと変えてブラック企業の経営者になってしまうなんて、想像力もモラルも欠如しているように私は思います。

また、自分でもプレイしている人ならわかると思うのですが、1日に必ず75SLPを達成しなければならないというのはかなりヘビーです。なにしろ1日お休みしたらパーティによってはリカバリーがほぼ不可能になります。1日ゲームをプレイできない日なんてザラにありますよね。

1日75~100SLP程度をノルマにしている人は多いと思いますが、私は週に1度お休みしてもクリアできるように週間に450SLPの獲得を目安目標にしています。またプライベートの用事等でプレイできないときは言ってくれればお休みしていいですよ、と伝えています。
本記事で紹介している業務委託契約書の内容もそのようにしています。

普通に考えて、1日休んだらクビになりそれまで稼いだお給料を未払いで没収される仕事は相当にブラックです。私だったらそんな会社で働きたいとは思いません。ManagerとScholarの間で合意が取れているならば法的には問題はないかもしれませんが、倫理的にはアウトと言っていいでしょう。

ManagerがやるべきことはScholarを縛り付けてノルマを達成させることではなく、ManagerとScholarで、あるいはScholar同士で密にコミュニケーションを取りつつ、楽しくゲームができる環境を用意することです。
そんなわけで私のScholarshipコミュニティでは、日々の報告は必須とせず、ゲームに関することやプライベートの雑談を中心に行うようにしています。

Scholarship内でイベントを開催するのもオススメです。
たとえば月内の目標を達成したら月内に得たSLPの報酬割合を5%アップするキャンペーン、誕生月の人の報酬割合を増やす、Scholar全体の獲得SLPの5%を賞金としてストックしScholarship内イベントを開催する、等々。

ぜひScholarが楽しくゲームをプレイするために何ができるかを考えてみてください。

まとめ

  • Axie InfinityはイケてるNFTゲームでPlay-to-Earnの象徴的存在
  • Schlarship制度によって原資がない人でもゲームに参加できる
  • ScholarshipはManagerとScholar間で業務委託契約を結ぶものであるため、色々ちゃんとしないとダメ
  • Scholarshipには当然リスクもある
  • Scholarに楽しくゲームをプレイしてもらうためのコミュニティ作りを意識しよう

以上です!
楽しくアクシーライフを!
BBBでした!

参考文献